甘味料という言葉を聞いたことはあると思いますが、漢字の通り甘味を出す添加物です。
甘味料は時代とともに色々な合成甘味料が開発されてきました。
発がん性が問題となり禁止された甘味料もあります。
また、一度は禁止された甘味料が使用してもよいことになったものもあります。
甘味料一つ一つを説明します。
サッカリンは砂糖の200~500倍の甘さがあります。
水に溶けにくい性質で、チューインガムに限り使用することができます。
バラ売りの場合にも表示するよう行政指導されていますが、実際にはほとんど表示されていません。
かつてサッカリンは合成甘味料の代表格でしたが、現在は昔ほどは使われていません。
サッカリンに代わる様々な甘味料が登場してきたという背景もありますが、やはりその安全性に疑問が残るというのも一因です。
過去にラットによる実験で発がん性が確認され、使用禁止となったことがあります。
その後、その発がん性はサッカリンに含まれていた不純物が原因だということが判明しました。
再び使用しても良いということになりましたが、完全に安全性が証明されたわけではありません。
サッカリンを水に溶けやすくした甘味料に、サッカリンナトリウムとサッカリンカルシウムがあります。
サッカリンカルシウムは、平成24年12月に許可された比較的新しい添加物です。
両者とも、菓子類、漬物、つくだ煮、アイスクリーム、清涼飲料水、乳飲料、シロップなどに使用されています。
アスパルテームは砂糖の約200倍の甘さがあり、比較的砂糖に近い甘さの甘味料です。
原料は天然型のアミノ酸で、化学的には同じ形をしています。
アミノ酸のフェニルアラニンを化合して作ることができます。
フェニルアラニン自体は必須アミノ酸ですので摂取すべきものですが、フェニルケトン症の患者は摂取を控えた方が良いでしょう。
フェニルケトン症の患者への警告として「L-フェニルアラニン化合物」と表示されています。
アスパルテームには不純物としてオキソピペラジンが含まれており、問題視されています。
不純物の含有率は1.5%以下にするよう定められていますが、完全な安全性が証明されたわけではありません。
洋菓子、ヨーグルト、お菓子類、かまぼこ、飲料水関係、その他いろいろな食品に使用されています。
コーヒー、紅茶用に飲食店などに置かれていることもあります。
ネオテームは砂糖の約1万倍の甘さを持つ、強烈な甘味料です。
甘さが強烈なため、他の粉で薄めた製剤が販売されています。
主に業務用として流通しており、一般の消費者が購入する機会はまずありません。
一日の摂取許容量が少ないため安全性が低いと捉えることもできますが、添加量が微量で済むため問題はないとされています。
ネオテームの「ネオ」は「新しい」という意味で、「テーム」はアスパルテームのテームです。
アスパルテームの改良品として2007年に許可された、比較的新しい添加物です。
アスパルテームは熱に弱く、水によく溶けるという性質を持っています。
一方ネオテームは熱に強く、アルコールにはよく溶けますが水に溶けにくい性質です。
飲料類、デザート、チューインガム、お菓子類など、いろいろな食品に使用されています。
アスパルテーム同様、コーヒーや紅茶用に飲食店などに置いてある場合があります。
アドバンテームは砂糖の14,000~48,000倍の甘さを持つ、とても強烈な甘味料です。
アスパルテームに新たな物質を結合して作られた合成甘味料で、2014年6月に許可されました。
アスパルテームと同様、いろいろな食品に使用されています。
アドバンテームは添加後の変質に懸念があります。
コーラタイプの炭酸飲料を26ヶ月経過させると、含まれるアドバンテームの52%が別の物質に変わります。
オレンジジュース、ケーキ類でもかなりの割合での変化が確認されました。
変化して新たに生成した物質の安全性は不明です。
ウサギにアドバンテームを大量に食べさせると、消化器の障害が出たという報告があります。
しかし添加は極めて微量で済むため、影響が出るほどではないという意見もあります。
食品安全委員会からはアドバンテームについて、「安全性上の懸念をもたらすような証拠は得られていない」との評価結果が通知されています。
アセスルファムカリウムは、砂糖の約130~200倍の甘さの甘味料です。
口に含むとすぐに甘さを感じますが、高濃度の場合はわずかに苦味を感じることがあります。
アスパルテームと併用すると、砂糖に近い甘さになります。
単独もしくは他の甘味料と併用し、低カロリー食品として販売されています。
水によく溶け加熱にも強いので、多くの食品に使われています。
清涼飲料水、あん類、生菓子、アイスクリーム、チューインガム、ジャム、タレ類、漬物、果実酒、乳飲料などのあらゆる食品に使用できます。
ドイツで開発され、日本では2000年に食品添加物として指定されました。
毒性実験や動物実験で安全性が確認されましたが、他の甘味料と併用した場合の安全性は不明です。
製造過程で発がん性物質(塩化メチレン)が使われることがあるため、一部ではその残留を不安視する声もあります。
スクラロースは砂糖の約600倍の甘みを持つ甘味料です。
1976年にイギリスで開発され、日本では1999年に食品添加物として指定されました。
砂糖の主成分であるスクロースをもとに生産されます。
砂糖に似たまろやかな甘みで、多くの食品に使用されています。
また甘味以外にも、豆乳などの豆臭やアルコールの刺激を緩和する作用もあります。
スクラロース自体は虫歯の原因にならないということが報告されています。
使用されている食品として、チューインガム、お菓子、生菓子、ジャム、清涼飲料、乳飲料、清酒、合成酒、果実酒などがあります。
スクラロースに含まれる不純物や、他の合成甘味料と併用したときの安全性は不明です。
天ぷらやフライなどの加熱で変化するので、変化後の物質の安全性も問題となっています。
キシリトールは砂糖と同じ甘さの甘味料です。
イチゴ、カリフラワー、レタス、ニンジンなどにもキシリトールが含まれています。
砂糖に比べて甘さが残らず、すっきりとした甘みです。
口の中で溶けると熱を奪うため、清涼感が得られます。
虫歯になるのを防ぐ作用を利用し、チューインガムによく使われています。
カスタードクリーム、お菓子、水ようかんなどにも使用されています。
加熱しても甘みの変化がないため加工品への利用も考えられますが、価格が高いのが妨げとなっています。
キシリトールに毒性は特にないとされていますが、弱い下剤の働きがあります。
骨粗しょう症の治療に役立つ可能性も報告されています。
2013年にテレビや新聞で「キシリトールは一部の人にアレルギーを起こす」との報道がありました。
しかしキシリトールとアレルギーの因果関係は、まだはっきりと証明されていません。
ソルビトールは砂糖の約60%の甘さで、梨やリンゴなどの自然界にも多く存在します。
リンゴのいわゆる「蜜」と呼ばれる半透明部分は、ソルビトールが蓄積したものです。
ソルビトールには虫歯になりにくくする、血糖値の上昇を抑えるといった作用があります。
口の中で溶けるとひんやりとした清涼感があり、ガムや飴、菓子類などに清涼剤としても用いられています。
餡(あん)に使用するとしっとりとした食感が得られるため、和菓子にもよく使われています。
魚肉練り製品に添加することで冷凍による変質を防ぎ、食感を保持する働きもあります。
かまぼこ、はんぺん、ちくわなど、魚肉練り製品には「ソルビトール」という表示の義務はありません。
その他にも洋菓子、ジャム、甘納豆、珍味、生麺、漬物、煮豆、つくだ煮、タレ類、酢などに使用されています。
安全性が高いとされていますが、多量に摂取すると軟便や下痢を起こします。
保湿剤、増粘剤として化粧品に添加されるほか、医療用としては下剤や浣腸液など、食品以外にもさまざまな用途で使用されています。
甘草(カンゾウ)というマメ科の植物からグリチルリチン酸を抽出し、これを水に溶けやすく加工して生産されるのがグリチルリチン酸2ナトリウムです。
この甘味料は砂糖の約200~700倍の甘さですが、甘さの質はあまり良くありません。
砂糖の代わりとして使用できないため、醤油や味噌などの塩分が多い食品の塩辛さを和らげる目的で使用されています。
グリチルリチン酸2カリウムを摂取すると、偽アルドステロン症を引き起こす恐れがあります。
アルドステロンとは副腎皮質ホルモンの一種で、これが過剰に分泌されたような症状が偽アルドステロン症です。
偽アルドステロン症はアルドステロン症と同様、高血圧や低カリウム血症などの症状をきたします。
グリチルリチン酸2ナトリウムの摂取によっても同じ症状が現れると考えられます。
甘草(カンゾウ)はマメ科の植物で、この抽出物に含まれるグリチルリチンの甘味は砂糖の約50倍です。
現在は輸入に頼っていますが、日本では300年以上前から栽培されていました。
独特な風味と甘みを持つため、醤油などの塩辛さを和らげる目的で昔から利用されてきました。
醤油、味噌、珍味、漬物、お菓子など、現在でもいろいろな食品に使用されています。
甘草はリコリスとも呼ばれ、欧米では菓子やリキュールなどに使われています。
甘草は漢方薬としても用いられており、緩和作用、止渇作用があるとされています。
健康に良いとされていますが、その一方で副作用も報告されており、安全性が懸念されています。
2015年、厚生労働省は甘草含有の漢方薬について、使用中止すべきとの考えを発表しました。
甘草抽出物の甘味成分はグリチルリチン酸ですので、同様の副作用を引き起こす恐れがあります。
肝機能障害を持つ方が摂取すると、高血圧や不整脈、むくみなどを引き起こします。
高血圧や高血糖、心臓病の患者などに及ぼす影響が懸念されています。
ステビアはキク科の多年草で、この抽出物に含まれる甘味成分には砂糖の約300倍の甘みがあります。
原産国のひとつであるパラグアイでは、古くからマテ茶などに甘味を加えるために用いられてきました。
1971年に大阪の企業が世界で初めてステビアの抽出物を商品化しました。
のちにアメリカで炭酸飲料などに使用され、現在も販売されています。
砂糖の代わりとして、ダイエット用食品や糖尿病患者向けの食事にも使用されています。
他にはアイスクリーム、菓子、ジュース類など多くの食品に添加されています。
かつてペルーの先住民が避妊に使用したとされ、ステビア抽出物が妊娠率を下げるとの論文がありました。
しかし後の研究で、その避妊効果は否定されています。
ステビア抽出物には多くの化合物が含まれており、甘味成分のみを工業的に取り出すのは困難です。
ステビア抽出物の摂取によって腸内で分解生成されるステビオールには、遺伝毒性が認められています。
複数の化合物を含んだ物質は実験での正確な確認ができないため、その安全性が懸念されています。
タウマチンの甘さは砂糖の約2000倍で、癖のある甘味を持っています。
苦みなどの不快な味を軽減するマスキング効果があるため、医薬品にも用いられています。
また香りを高める作用もあるため、香辛料、香料、風味調味料などと一緒に使用されることもあります。
いずれの場合も表示は「甘味料」で良いとされています。
水に溶けて微量で甘味を出すため、他にも菓子類、乳製品、清涼飲料水など色々な食品に使用されています。
タウマチンは読み方によって、ソウマチン、ソーマチンとも呼ばれています。
タウマチンの原料は、西アフリカの熱帯雨林地帯に生育しているクズウコン科の植物です。
この植物の種子から抽出、精製されたものがタウマチンです。
甘味を示すアミノ酸が207個結びついたタンパク質で、卵や肉のタンパク質と同様に消化されます。
アフリカの人々は長い間タウマチンを使用していますが、特に問題は発生していないようです。
発がん性の試験データがなく、安全性試験もまだ十分に行われていません。