一括表示の食品添加物 膨張剤

2018年7月26日

膨張剤とは、パンやケーキなどを綺麗にふくらませるために利用される添加物です。

いわゆるベーキングパウダーやふくらし粉の成分です。

パンやケーキを膨らませるには、微生物であるイースト菌(酵母菌)の発酵によって発生する炭酸ガス(CO2)でゆっくり膨らませる方法と、炭酸水素ナトリウム(重曹)などの膨張剤を加熱して、炭酸ガスやアンモニアガスを発生させて一気に膨らませる方法があります。

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膨張剤には多くの種類の物質があり、代表的なものは、炭酸水素ナトリウム(重曹)、炭酸水素アルミニウム、L-アスコルビン酸、クエン酸、ピロリン酸四ナトリウムなど41種類あります。

添加物名が長い場合や複数使用するなどの表示スペースの問題から、まとめて膨張剤と一括表示が認められています。

炭酸水素ナトリウム  

別名、重曹、重炭酸ナトリウム、重炭酸ソーダともいう合成添加物です。

天然の物もありますが、人工的に作られるものは、塩化ナトリウム溶液が電気分解してできた水酸化ナトリウムに二酸化炭素を反応させる方法で大量生産されています。

炭酸水素ナトリウム(重曹)を加熱すると、炭酸ガスが発生し、炭酸ナトリウムが新たにできるため、アルカリ臭がします。

アルカリ臭は製品には好ましくない臭いのため、それを中和するために、他の酸性の物質を組み合わせて使用されることがあります。

一緒に使用する酸性の物質によって、健康に影響を与えるものがありますが、炭酸水素ナトリウムのみの使用では、安全といわれています。

食品添加物としては、ベーキングパウダーなどの膨張剤として蒸しパン、蒸し饅頭(肉まんなど)、クッキーなどに使用されるだけでなく、PH調整剤、炭酸水の素、山菜のあく抜き、肉や煮物を柔らかくする、中華麺のかんすいなど多くの食品に使用されます。

また食品以外では消火剤、掃除用の洗剤、胃薬などの医薬品、農業用の薬品、入浴剤など様々な用途で活用されています。

使用基準、1日の許容摂取量の規定はありません。

炭酸水素ナトリウムは多量摂取した場合、血液のアルカリと酸のバランスが崩れてアルカリ性に傾くアルカローシスの恐れや、呼吸器に異常をきたすという報告があるので、単独での誤食には注意が必要です。

炭酸水素ナトリウム+ミョウバン

ふくらし粉、ベーキングパウダーの主成分の合成添加物です。

ミョウバンは、ラテン語で「苦い塩」という意味で、アルミニウムを含む化合物です。

硫酸カリウムアルミニウム十二水和物を指し、カリミョウバン、カリウムミョウバンともいわれます。

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古くから、医薬品、染色、皮なめし、食品添加物など様々な用途で使用されてきました。

ミョウバンは、膨張剤として炭酸水素ナトリウムを加熱したときに発生するアルカリ臭を中和するために併用されます。

メロンパンなどの菓子パン、スポンジケーキ、ドーナツ、蒸し饅頭、ホットケーキミックスなどに使用されています。

色止め剤としてナスの漬物、しその実漬けなどに、魚介類の型崩れ防止や保存の目的に、品質安定剤として野菜の煮物に、食品の着色料などにも使用されています。

食品添加物として味噌には使用不可と定められています。

健康被害としてミョウバンに含まれるアルミニウムは、生殖系や神経発達に悪影響を与えるという報告があります。

厚生労働省が平成23年~24年に行った調査の結果、すべての年代のアルミニウムの摂取量は平均を下回りました。

しかし、菓子パンやお菓子類を摂取する機会が多い一部の小児に、アルミニウムの許容摂取量を超える可能性があると報告されています。

同省はその対応として、使用基準の検討や、パンメーカーなどに使用量の低減化を要請し、製造業界はその依頼を受け、アルミニウムを含む膨張剤の使用を自粛する対応を取っています。

炭酸水素ナトリウム+ミョウバン以外 

膨張剤として、炭酸水素ナトリウムと併用される物質にはミョウバンの他に、有機酸、有機酸塩、リン酸塩などがあります。

膨張剤として炭酸水素ナトリウムを加熱すると炭酸ガスが発生し、アルカリ臭が発生します。

アルカリ臭は好ましくない臭いのためそれを中和させるために併用されており、ベーキングパウダーやふくらし粉に配合され、パン、ケーキ類、ホットケーキミックスなどに使用されています。

膨張剤の一括表示が許されている添加物には、アジピン酸、コハク酸、クエン酸、DL-酒石酸、炭酸カリウム、ピロリン酸二水素カルシウム、ポリリン酸ナトリウムなどのリン酸塩など多くあります。

そのうちのコハク酸、クエン酸などは安全といわれていますが、整腸作用、疲労回復効果があると言われている酒石酸は、人の健康に対して安全であるというデータが十分ではありません。

また、膨張剤のみならず食品添加物として多用され多量摂取が問題視されているピロリン酸などのリン酸塩など避けたい物質も使用されています。

ミョウバン以外のこれらの添加物を使用した場合は「ミョウバン不使用」や「アルミフリー」と表示されることもあります。

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