食品添加物の種類 酸化防止剤
リンゴを切っておくと褐色に変わります。
これは空気に含まれている酸素とリンゴに含まれている酵素の作用により褐色になるのです。
サラダ油などの食用油脂や、てんぷら、フライ食品など食用油脂を含む食品は空気の酸化を受けやすく褐色になります。
これを防ぐために酸化防止剤が添加されています。
酸化防止剤を使用した場合には、必ず酸化防止剤(物質名)という食品表示が必要です。
それぞれの酸化防止剤の名称と用途をまとめました。
BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)
BHTは酸化防止剤として主にバター、マーガリンなどの食用油脂、冷凍魚介類、チューイングガムなどに使用されていますが、安全性に関して以前から評判がよくない添加物です。
多量に摂取した場合、変異原性(DNAや染色体の異常を引き起こすこと)や催奇形性(奇形児が生まれること)が認められています。
そのため日本では添加量の規制を設けて使用していますが、スウェーデン、オーストラリアなどでは全面的に使用禁止、アメリカでは乳幼児用の食品への使用が禁止されています。
BHTは耐熱性で、水に溶けにくいといった不溶性の特徴があります。
また、自らが別の物質に変化することで、食品中の脂質の酸化を抑えるという働きをします。この時変質した物質についての安全性試験は行われていません。
BHTは、同じ酸化防止剤のBHAと同時に使用することで相乗効果が得られるため併用されることが多いですが、BHTとBHAの2種類の合成抗酸化剤を同時に摂取した場合の安全性に関しては未だ検討されていません。
BHA(ブチルヒドロキシアニソール)
BHAは主に油分の酸化防止のため、冷凍魚介品・魚介乾製品やバターなどに使用される食品添加物です。
BHTと並んで、現在に至るまで安全性に関する疑いがもたれています。
1981年、ラットで胃がんが発生することが明らかにされたのを受けて、当時の厚生省はいったんBHAの使用禁止に動きましたが、諸外国の再調査を経て、通常の使用量であれば人体での発がん性は認められないとして、従来通りの使用を継続することになりました。
その一方で、低用量のBHAに発がんを抑える効果があるという発表もなされており、安全性に明確な結論が出ているものではありません。
BHAは2004年以降使用量が減少しており、一日当たりの日本人のBHA摂取量は、ほぼ0に近い数値となっています。
しかしながら食品の製造過程で、BHAを原材料にすでに使用していた場合は原材料名として食品表示する義務がないことから、食品にBHAが使用されていないか、完全に把握できているわけではありません。
また輸入品の食用油脂、魚介加工品には使用されているものもあります。
ミックストコフェロール、ビタミンE
トコフェロールとはビタミンEのことで、天然のものと合成のものがあります。
天然のトコフェロールにはα(アルファ)・β(ベータ)・γ(ガンマ)・δ(デルタ)の4種類があり、この4種類の混合物がミックストコフェロールと呼ばれています。
トコフェロールは植物油脂、米や小麦の胚芽、大豆、緑黄色野菜、ナッツ類などに含まれる脂溶性ビタミンで、脂肪分の多い食品の酸化防止剤や、栄養強化剤として使用されています。
人体内で抗酸化作用があり、細胞の老化を抑えるので、美容や健康を目的としたサプリメントなどで摂取する人も多いのですが、できれば普段の食事から摂取することが大切です。
水に溶けず油に溶けることから、即席めんの揚げ油として使用されたり、食肉加工品などにも使われています。
①d-α-トコフェロール、②d-γ-トコフェロール、③d-δ-トコフェロール
ミックストコフェロールから分離した三種類のトコフェロールです。いずれも天然のビタミンEであり、使用基準は設けられておらず、安全性に関して問題は特に指摘されていません。
このうちで抗酸化作用が最も大きいのが③のd-δ-トコフェロールであり、自然界に最も広範囲に渡って存在します。
また①は栄養補助食品に使用されるほか、食用油脂や、食用油脂を含んだ食品の酸化防止に使用することもできます。
②と③は抗酸化作用に持続性が強いため、酸化防止剤としてインスタントラーメン、フライ製品、食肉加工製品などに使用されています。
また、①同様に栄養強化の目的で使用されることもあります。
トコトリエノール
トコトリエノールはビタミンEの一種で、パーム油などの食用油や米ぬか、大豆等に含まれています。
脂溶性で、ねばりがある褐色の液体ですが、粉末にした製剤も利用されています。
同じビタミンEであるトコフェロールと併用される場合もありますが、トコフェロールよりも約50倍の抗酸化作用があり、更には動脈硬化や脳卒中の予防や、血中コレステロール・中性脂肪の低下、肌の健康維持といった、健康に役立つ機能を多く持っているため、「スーパービタミンE」と呼ばれています。
また、添加した食物の酸化を防ぐだけでなく、人体内で増えすぎた活性酸素を取り除く働きもします。
使用基準がないため、あらゆる食品に使用できますが、主にバターなど動物性油脂類、インスタントラーメン、フライ製品、食肉加工製品などの酸化を防ぐために用いられています。
dl-α-トコフェロール(ディーエル)
トコフェロールにはd(ディ)型とl(エル)型があり、天然のものはd型で、もともと自然界に存在しなかったものをl型と呼びます。
dl-α-トコフェロールは、このd型とl型を1対1の割合で科学的に合成してできている合成型ビタミンEです。
天然のd-α-トコフェロールと異なり、栄養強化を目的とした使用はできません。
また、天然のものと比べて体内で作用する力は弱いと言えます。
とはいえ使用基準はないので、あらゆる食品に使用されています。
主に油脂類やインスタントラーメン、フライ製品、食肉加工製品などの酸化防止用に使われます。
なお、食品表示によっては天然型か合成型かどちらを使用しているのかわからなくなっています。
アスコルビン酸(ビタミンC) アスコルビン酸カルシウム アスコルビン酸ナトリウム
アスコルビン酸(ビタミンC)は、人の体内では作れないため、緑黄色野菜、柑橘系の果物、緑茶などの食物から摂取する必要があります。
その働きは、コラーゲン生成・解毒作用・鉄の吸収を促進など、多岐に渡っています。
欠乏すると壊血病となり、貧血・歯肉や皮膚からの出血等の症状が現れますが、日々の食事をバランスよく取っている場合、欠乏症になることは稀です。
食品添加物としてのビタミンCはデンプンを加水分解し抽出されるブドウ糖を発酵して製造された化学合成物質で、レモンなどの天然物から抽出したものではありません。
しかし、法令を守り高純度を保って作られているものであれば安全です。
とても不安定で変化しやすい性質をもっており、特に合成のビタミンCは、アミノ酸と結びついて褐色に変わるとき、複雑な化合物を作り出します。
こうしたことは天然のビタミンCには見られないことで、大きく異なる点です。
三種類ともに水溶性で、油脂類には溶けません。
酸化防止剤以外には栄養強化剤として、あるいはパンの品質を良くするため等に用いられ、清涼飲料水の風味付けにも使用されることがあります。
その他に、果実の缶詰のシロップに添加したり、ジャムやマーマレードにも使用します。
ハムの発色補助剤、冷凍魚や魚介塩蔵品の変色防止、ドロップ・粉末ジュースのビタミン強化と酸味付けなど、様々な食品にいろんな用途で用いられています。
アスコルビン酸カルシウムは、2008年に日本での使用が認められました。
アスコルビン酸ナトリウムは、アスコルビン酸を中性にしたものですが、アスコルビン酸より水によく溶けるという特徴があります。
アスコルビン酸ステアリン酸エステル アスコルビン酸パルミチン酸エステル
それぞれアスコルビン酸にステアリン酸、パルミチン酸を反応させて生成されたもので、いずれもビタミンE以上の強い酸化防止効果があります。
また、本来熱に弱く水溶性であるビタミンCを油脂などに添加する目的で、化学合成により油溶性に変えてあります。熱にも強いです。
この二つは、ポリソルベートなどの乳化剤を加えた添加剤製剤として、食品メーカーで使用されます。
乳化剤製剤には抗菌作用があり、熱にも酸性にも強い菌の増殖を抑えられます。
缶飲料、デザート、レトルト食品に使用されていますが、乳化剤と同時に摂取した場合の安全性はまだ検討されていません。
他の食品への使用は、スナック菓子・生菓子・パン・チルドのデザート・ペットボトルの飲料(乳酸菌飲料、ミルクコーヒー、ミルク紅茶など)、インスタント食品・乳製品・冷凍食品・水産練製品・マーガリン・ドレッシングなど幅広く、また惣菜などの変色を抑えるためにも用いられています。
エリソルビン酸 エリソルビン酸ナトリウム
エリソルビン酸は、別名をイソアスコルビン酸と言い、アスコルビン酸(ビタミンC)のいわば兄弟のような物質でありながらも、ビタミンCとしての働きはなく、通常他の酸化防止剤と併用されています。
ちなみに、保存料のソルビン酸とは別物です。
水に溶けやすく、果汁飲料や、野菜や果物の缶詰、ハム、ソーセージ、冷凍魚介類など様々な食品に使われています。
ただし、酸化防止の目的以外に用いてはならないという使用基準があります。
エリソルビン酸ナトリウムは、エリソルビン酸のナトリウム塩で、肉の製造過程で桃色を保つ働きをします。
また、風味を安定的に保ち、発がん性物質のニトロソアミンが作られるのを防ぐ目的でも使用されます。
エリソルビン酸に関しては、平成2年の厚生省の研究で「変異原性が認められ、危険性が高い」との報告がありましたが、平成28年の内閣府食品安全委員会の発表では、指定されている使用目的や使用量を守って添加される場合、エリソルビン酸・エリソルビン酸ナトリウム共に、安全性に懸念はないと報告されています。
チャ抽出物
チャ抽出物は、緑茶・ウーロン茶・紅茶などのお茶から水やアルコール、その他の溶剤を使用して抽出した天然の酸化防止剤です。
水溶性で食品へ浸透しやすく、油脂類、飲料、菓子類、食肉加工品、水産加工品などに使用されています。
ビタミンCやビタミンEと併用される場合もあり、食品の日持ちを良くしたり、悪臭を取り除く働きもします。
ただし、抽出方法にアルコールや酢酸エチルなどを使用するため、普通のお茶を飲む場合では摂取することのない成分も抽出されています。
茶にはカテキン(苦味成分)、カフェインなどが含まれていますが、平成16年の内閣府食品安全委員会の資料によると、カテキンは動物細胞の染色体に異常を引き起こすとの報告があります。
また、海外でチャ抽出物を含む医薬品やサプリメントにより肝臓障害が生じたという事例が報告されており、販売停止になっている国もあります。
ただし、肝臓障害と茶カテキンの因果関係が明らかになっているわけではありません。
いずれにしても飲料のお茶として摂取するのは問題はありませんが、チャ抽出物は成分や濃度が普通のお茶とは異なっていることを踏まえ、適量を心がける必要があります。
カテキン
カテキンはポリフェノールの一種で、緑茶の渋みの主成分です。
抗酸化作用があり、食事と共に摂取すると脂肪の吸収を抑えるとして肥満予防、虫歯予防、コレステロール値を低下させるなど、様々な健康に良い働きをします。
菌やウイルスに対して抗菌作用があり、緑茶を飲むと風邪やインフルエンザ予防になります。
強い酸化防止効果があるので、チャ抽出物と同じく油脂類や飲料、菓子、食肉加工品などに使用されています。
ビタミンCやビタミンEと併用することでさらにその効果が高まります。
しかし、カテキンは原料であるベグアセンヤクやガンビールなどの葉や茎を乾留(空気が入らない状態で加熱すること)、あるいは水やアルコールで抽出したものに、メタノールや酢酸エチルといった有機溶剤を用いて作られるので、純粋にお茶の葉だけがその成分なのではなく、他の物質も含まれています。
またカテキンは動物細胞で染色体に異常を起こすという報告もあり、ヨーロッパでは医薬品として販売されていた緑茶カテキンの摂取による肝臓障害の事例から販売が禁止されています。
日本では肝臓障害などは報告されていませんが、一度に多量のカテキンを摂取する場合は注意が必要です。
EDTA二ナトリウム(エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム)
EDTA二ナトリウムは、食品の酸化を促進する金属イオンを捕まえる性質があるため、間接的に酸化を防ぐという目的で使用されます。
使用は缶詰食品や瓶詰食品にのみ限られており、その他使用基準が定められています。
しかし、海外では幅広く使われている国もあるので、輸入品の使用には注意が必要です。
また、動物細胞に染色体異常を起こす可能性や、妊娠中のラットに与えると誕生した子供に口蓋裂や脳・目の欠損が見られたことが報告されており、少なくとも生殖器や胎児には悪影響があることが確認されています。
なお発がん性については、はっきりとした評価はされていません。
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