食品添加物の種類 増粘剤・安定剤・ゲル化剤・糊料

2018年5月30日

増粘剤やゲル化剤など呼び方は用途によって様々ですが、全てとろみや粘りを出すための添加物です。

プリンやゼリーのように固めたり、ケチャップやソースなどのとろみを出したり、生クリームやアイスなどの粘りなど多様に使われています。

天然から抽出できるものや合成のものもあり、それぞれ微妙に性質が異なるため、用途と使用した物質名を併記することになっていますが、何種類も使用した場合は「増粘多糖類」と表示したり、分からなければ総じて糊料と表示しても良いことになっています。

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ペクチン

ペクチンは合成で製造することができず、リンゴの絞り粕や柑橘類の皮にいろいろな化学物質を加えて抽出されます。

ペクチンには天然のものと天然のものを化学的に変化させたものがあります。

また、ペクチンにはメチルエステル化の度合いによってHMペクチンとLMペクチンに分けられます。

HMペクチンは酸や砂糖のある食品でゲル化するため、ゼリーやジャムの製造に用いられます。

LMペクチンはCaなどの2価イオンや乳のある食品でゲル化するため、牛乳プリンの製造に用いられます。

ペクチンは野菜や果実に多く含まれており、体内で水溶性食物繊維として機能するため、整腸作用・コレステロール低下作用などを有します。

他の天然の多糖類と2種類以上併用した場合、「増粘多糖類」の表示をすれば良いことになっています。

カラギーナン

カラギーナンは海藻から水やアルカリ水などで抽出し製造され、室温でゲル化します。

カッパ、イータ、ラムダの3タイプがあります。

カッパタイプは強固なゲルを作り、イータタイプは柔らかいゲルを作り、ラムダはタンパク質と混ぜたときに柔らかいゲルを作ります。

食品ではアイスクリーム・乳製品・飲料などに使用され、ハムなどは離水防止のために使用されています。

その他の工業ではシャンプー・化粧品のクリームなどにも使用されています。

他の天然の多糖類と2種類以上併用した場合、「増粘多糖類」の表示をすれば良いことになっています。

アルギン酸

アルギン酸は褐藻類に含まれている粘性のある多糖類ですが、その性質は同じ多糖類のデンプンとは全く違います。

原料は昆布やオオウキモ(ジャイアントケルプ)のような大型の海藻であり、日本より昆布が安価な中国では、アルギン酸製造のために昆布を大量養殖しています。

アルギン酸にアルカリを加えて中和すると水に溶けるようになり、さらにカルシウムイオンを加えることでゲル化します。

粘性と保水性があるため、パンなどのデンプンを含む食品に対して、だんだん固くなり食感が落ちる「老化」という現象を防ぐ効果があります。

増粘剤としてはタレなどの調味料・ジャムなどに、安定剤としてはアイスクリームなどに、ゲル化剤としてはデザートなどに用いられています。

他の天然の多糖類と2種類以上併用した場合、「増粘多糖類」の表示をすれば良いことになっています。

①アルギン酸ナトリウム ②アルギン酸アンモニウム ③アルギン酸カリウム ④アルギン酸カルシウム

①~④はアルギン酸の塩であり、化学合成品ですが食品への応用は大体アルギン酸と同様です。

①は水溶性で冷水・熱水にもよく溶けます。

①の水溶液にカルシウム塩を加えるとゲル化し、この現象を利用して作られているのが人工イクラです。

また、リン酸塩を加えた場合はゲル化に時間を要し、クエン酸などを加えた場合は短時間でゲル化します。

②③は高い保水性があり、陽イオンを添加すると耐熱性のゲルを作ることができるため、医療や工業用品に使用されます。

④は不溶性であり、中華麺の製造にて食感の向上や伸びてしまうのを防ぐ目的で、1%ほど小麦粉に添加されています。

①~④は化学合成品のため、他の天然の多糖類と2種類以上併用しても、「増粘多糖類」だけの表示はできません。

アルギン酸プロピレングリコールエステル

昆布などの褐藻類から得られたアルギン酸に、プロピレングリコールをエステル結合させたものです。

アルギン酸ナトリウムは酸性に弱いため、そこを改良する目的で作られた添加物です。

この添加物はアルギン酸にプロピレンオキサイドという極めて毒性の強い物質を反応させて化学合成されたものですが、法令にはこの添加物に対しての含量の規定値がありません。

アルギン酸プロピレングリコールエステルの特徴としては冷水にも溶け、粘る糊状の液体になり、酸性でも沈殿しません。

さらに、カルボキシル基のエステル化度の割合を示す数値によって、水と油の両者に乳化安定剤として使い分けることができます。

そのため用途は広く、増粘剤・安定剤として酸性の乳酸菌飲料・果汁飲料・ドレッシング類・味噌・しょう油などに、また食感改良としてパンや麺類にも用いられています。

化学合成品のため、他の天然の多糖類と2種類以上併用しても、「増粘多糖類」だけの表示はできません。

キサンタンガム

細菌キサントモナスを大量に培養し、培養液から多糖類であるキサンタンガムを取り出してつくられます。

キサンタンガムは安全上の問題はないとされていますが、法令では窒素量を1.5%以下と規制しており、換算すると培養液由来のタンパク質量は約9%に相当します。

小麦アレルギーを引き起こすアレルゲンのタンパク質量は約10%であるため、このタンパク質由来のアレルギーを引き起こす可能性も十分にあり、安全性に不安が残ります。

添加物としては冷水にも溶け、熱・酸に強く、乳化力があり、また粘度については温度の変化によって左右されません。

そのため、ドレッシング・マヨネーズ風調味料・ケチャップ・ソース・練りワサビ・つくだ煮・レトルト食品・漬物・しょう油・ゼリー・プリンなど幅広い多くの食品に用いられています。

菌由来の天然多糖類であるため、他の天然の多糖類と2種類以上併用した場合、「増粘多糖類」の表示をすれば良いことになっています。

グアーガム

インドからパキスタンにかけて生育している、マメ科の植物(グアー)の種子を粉にしたもの、種子から水で抽出したものがあり、主成分は多糖類です。

グアーガムには水に溶ける水溶性食物繊維が含まれています。

水溶性食物繊維とは水に溶ける食物繊維で、リンゴや柑橘類の皮から抽出されるペクチンもその一つです。

水溶性食物繊維には整腸作用や高コレステロール血症が改善される効果があり、グアーガムには血糖値の上昇を抑える効果もあります。

ただこの整腸作用により便通が改善される効果もあり、便の量が増えるため、腸閉塞になりやすい人は摂取量に気を付ける必要があります。

グアーガムは糸を引き非常に粘りが強く、増粘剤としてドレッシングなどに、安定剤(乳化安定剤)としてアイスクリームなど幅広く用いられています。

他の天然の多糖類と2種類以上併用した場合、「増粘多糖類」の表示をすれば良いことになっています。

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①CMC-Na ②CMC-Ca

セルロースを主成分とする木材パルプに、水酸化ナトリウムなどを反応させて、セルロース分子の一部をカルボキシメチル化し、これをナトリウムまたはカルシウム塩にした化学合成物質です。

①・②とも人工物でありながら一般的に安全とされています。

しかし化学薬品の使用量や不純物量、分子量、メチル化の程度などについて具体的な法令の規制がなく、品質や安全の保証が十分とは言えません。

ただ食品への使用量については、①・②ともそれぞれ食品への添加は2%以下と2.0%と定められています。

添加物としては、①は粘性・乳化安定性などがあるため、用途はとても幅広くなっています。

加えると食品が腐敗しにくくなることから、アイスクリーム・ホイップクリーム・カスタードクリームによく用いられており、添加することで生クリームを減らせ、低脂肪化にも役立っています。

麺類・春雨には茹で時間の短縮・麺がのびにくくするなどのために用いられ、タレ類には食感改良、離水防止、均一性の保持に用いられています。

また、飲料に添加すると不溶物が沈殿しにくくなります。このような特性から、食品だけではなく工業用の糊にも用いられています。

②は逆に増粘性・ゲル化性・乳化安定性がほとんどありません。

しかし吸水して何倍にも膨らむという性質を利用し、固形スープのような固形食品が溶けやすくなるために用いられたり、錠剤型のお菓子に用いられています。

タマリンドシードガム

タマリンドは東南アジアからインドにかけて自生しているマメ科の巨大な常緑樹です。

マリンドシードガムはタマリンドの種子から水またはアルカリ水で抽出された、天然由来の多糖類を主成分としているものです。

タマリンドの果実や種子は昔から食されており、甘味・酸味が特徴の果実は、生食はもちろん、ジャム・菓子・カレーに用いたり、加工食品としては清涼飲料水・ピクルス・シロップに用いられたりしています。

種子は茹でたり、炒めたり、揚げたりなどの調理法で食べることができます。

添加物としては増粘剤・安定剤・ゲル化剤としてとても幅広く使用されています。

例えば沈殿を防止しつつ内容物を均一に保つ性質(懸濁安定性)があるため、ソース類・焼き肉のタレ類・ドレッシング類に用いられ、コクを引き出しています。

また、つくだ煮には照り出し、艶出し・離水防止のために用いられ、ジャム類・ゼリーなどデザート食品にはゲル化・離水防止のために用いられています。

その他、漬物・即席めん・てんぷら粉・飲料など多くの食品で使用され利便性の良い添加物のひとつです。

他の天然の多糖類と2種類以上併用した場合、「増粘多糖類」の表示をすれば良いことになっています。

アラビアガム

北アフリカ,ナイル地方に生育する、マメ科のアカシアの木から採取した天然由来の多糖類が主成分です。

果実や種子からではなく、アカシアの樹皮の傷から分泌された樹脂を乾燥させて作られています。

水に良く溶け、吸水すると膨張する性質があります。

その水溶液の粘性は低いですが高い乳化安定性があるため、アイスクリーム・ガムシロップには増粘安定剤として用いられ、粒状のガムや医薬品の錠剤をコーティング加工する際に被膜形成剤として用いられています。

ただ、アラビアガムを摂取することで、ガスなど軽度の胃腸症状、アレルギー性喘息や鼻炎、抗生物質の腸からの吸収を阻害してしまう可能性がありますので注意も必要です。

一方、食品だけではなく、切手の粘着面の糊・絵具など多くの工業目的で使用されています。

他の天然の多糖類と2種類以上併用した場合、「増粘多糖類」の表示をすれば良いことになっています。

ジェラン(ジェランガム)

ジェランガムは真正細菌(バクテリア)が作る水溶性の多糖類です。

ジェランガムには,脱アシル型ジェランガムとネイティブ型ジェランガムの2種類があり,それぞれの全く異なる特性を生かし、様々な食品に用いられています。

脱アシル型ジェランガムの主な特性は、固くもろいゲルを形成する・熱に強い・酸性に強い・透明度が高い、などがあります。

そのため添加物としては、ゲル化剤としてデザートゼリー・ジャム類などに用いられています。

また、動物性であるゼラチンの代替品としてベジタリアン用の食品に利用されています。

ネイティブ型ジェランガムの主な特性は、離水防止効果の高い弾力のあるゲルを形成する・高い温度でゲル化する、沈殿を防止しつつ内容物を均一に保つ性質(懸濁安定性)などがあります。

そのため添加物としては、多くの食品に利用されています。

デンプンの代わりに添加すると、和風デザートのようなもちの食感のゼリーを作ることができます。

デンプンは長期間の保管にはむかないため、ゲルの特性や食感が変わらないジェランガムは利便性があります。

また、不溶性のものを懸濁させる目的で添加しているものとしては、ココア飲料や豆乳、ドレッシングなどがあります。

法令上、不純物は15%まで、不純物たるタンパク質は14%前後まで含まれても良いことになっています。

一日摂取許容量は特に規定されていませんが、過剰に摂取した場合は緩下作用に注意が必要です。

大豆多糖類

大豆から豆腐を作る際に副産物としてできる「おから」から製造する不溶性食物繊維です。

主な成分はガラクトースであり、植物の細胞壁や食物繊維からなっています。

大豆多糖類の主な機能は、水には溶けず、高い吸水性・吸油性があり、数倍に膨れます。

これが腸を刺激することでぜん動運動に働きかけたり、排便を促進させたりする整腸作用効果があります。

添加物としては、乳化安定剤としてドレッシング・ソース類など、麺類・米飯の結着防止、老化防止として乾麺・生麺・米飯・スポンジなどに用いられています。

また、酸性下でタンパク質を安定化し、飲料でも粘性が低いため、酸性乳飲料・酸性デザートなどに用いられています。

通常、他の天然の多糖類と2種類以上併用した場合、「増粘多糖類」の表示をすれば良いことになっていますが、大豆は特定原材料に準ずるアレルギー物質のため、「大豆由来」等「大豆」という単語を表示することが推奨されています。

食品として使用した場合は「安定剤」の表示は不要であり、「大豆多糖類」「ダイズ多糖類」と表示した方が良いです。

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